ストーリー

【鼎談(ていだん)】3名の仕掛け人が語る 国内初のポストプライシングサービス”あと値決め”が見据える社会

 国内初のポストプライシングサービス”あと値決め”は、2019年8月29日より一般公募を開始しました。公開から約4ヶ月が経ち、メディアでの露出が増えつつある今だからこそ、仕掛け人たちが”あと値決め”に込めた想いを発信します。
 株式会社ネットプロテクションズ(以下、NP)代表取締役社長の柴田紳、初期段階から本プロジェクトを応援してきた秋山瞬、そしてプロジェクト責任者である専光建志が、記者会見やLP(ランディングページ)では伝えきれていない”あと値決め”の意味や成立背景を語りました。

(右から)柴田、専光、秋山(右から)柴田、専光、秋山

1.”あと値決め”とは

"あと値決め"とは

 商品・サービスを実際に体験した利用者が「あと」から値段を決められる「ポストプライシング」を丸ごと代行する国内初の取り組みです。利用者は自分の実体験に加え、他の利用者の価格や感想を参考に、自ら価格を決定することができます。2019年8月29日より、一部のサービスで利用が開始され、導入の一般公募も開始いたしました。

2.”あと値決め”は社会に何をもたらすのか

情報不信の現代に一石を投じる

あと値決めの役割

専光
 まずは、”あと値決め”によって解決できること、すなわち「”あと値決め”は社会にとってどのような意義があるか」という点を考えていきたいと思います。

柴田
 インターネットの無かった時代には、ユーザーには商品の良し悪しを知る術が何も無くて、恐ろしいことに店員の話しか情報がなかった。例えば、PCを買うときに「店員を信用していいのか、はたまたこれは在庫処分なのか」とすごく困った経験がある。
 インターネットの登場以降、消費者と事業者の情報量の偏りが解消されて、口コミにより相互信用が一定生み出されたと思う。しかし徐々に、口コミ自体をマーケティング手法として企業が恣意的に活用するようになり、口コミサイトが生み出してきた相互信用が弱まってきている。それが今って感じだよね。
 これに対し”あと値決め”は、口コミの信憑性が高いと思う。実際に購買したりサービスを使ったりした人が自ら価格を決定して、しかもその決定した価格と体験に対するレビューが全体に公開されるから。それに、第三者であるNPを介して利用者が自ら「値決め」をするからこそ、価格や公開されるレビューに企業側の意図が入り込む余地が無い。
 消費者と事業者が相互に信用できる仕組みをつくるという点で、いわば行き過ぎた口コミマーケティングのアンチテーゼにできるよね。

専光
 そうですね。消費者と事業者が相互に信頼できる仕組みをつくることで、買ったあとに後悔する体験を無くすことができると考えています。
 柴田さんがおっしゃる通り、”あと値決め”のレビューの信憑性を支えているのは、実際に体験した人だけが評価できるということです。この制約のおかげで、ステマ等の嘘のコメントが書けないし、有名人や高評価の声を大きくすることもできない。どんなに高い評価をつけた人でも、どんなに有名な人でも、1つのコメントとしてしか並ばない。このように「事業者側が恣意的にコントロールできない情報をつくる」というのは、”あと値決め”のコアな役割になってくると思いますね。

柴田
 第三者提供の仕組みであることが重要だよね。以前「やろうと思えばこの仕組みは自前でも簡単に作れてしまうね」と専光に話したことがあるけど、自分たちで好きな評価だけをピックアップして表示する仕組みにできてしまう可能性がある時点で、その評価の信用は揺らいでしまう。
 その観点では、”あと値決め”は「格付け機関」と似ている気がする。格付けと言うと悪いイメージもあるかも知れないけれど、恣意性の無い格付けには相互信用を担保する役割もあり、その価値はすさまじく大きい。”あと値決め”が「格付け機関」としての役割を担うことが、社会のアタリマエになる可能性もあるね。

専光
 グッドデザイン賞とかミシュランといった認証機関のような感じですね。”あと値決め”をどこでもだれでも使えるツールとして提供するというより、導入していること自体が品質保証マークとして機能する方が、相互信用をつくることに寄与すると思います。
 これを達成するためには、「良いものをより広げる」という目的に沿って導入事業者を慎重に選ぶ必要があります。

専光 建志

柴田
 ルールさえ曲げなければ「良いものを広げる」というのは担保できると思う。「過度なマーケティングのために”あと値決め”を使うのは許容していません」と断言してしまえば、価格以上のサービスを提供できるという自信のある事業者だけが”あと値決め”を導入するはずだよね。

専光
 ”あと値決め”は過度なブランディングには使えないですからね。

秋山
 良いものをきちんと届けたいと思ったときに、事業者側も努力しなくてはユーザーに届かないのは当然だけど、むしろ良いものを作っていなくても届け方に秀でていたら売れてしまうというのは歪んでいるよね。

柴田
 そう。一方で、品質には自信があるけどその価値をうまくユーザーに伝えられていないと思っている会社にとっては、「これめちゃくちゃいいツールじゃん」って気づいてもらえるはず。

消費者の「声」を届ける

専光
 評価の信憑性だけでなく、消費者の「声」を事業者に届けられることも、”あと値決め”の重要な特徴です。
 事業者にとって、サービスの初期段階で価値の高いサービスをつくるには、やはり消費者の「声」が必要だと思っています。

柴田
 消費者としても、「払いたい」よりも、良いと思った商品・サービスに対して「声を伝えたい」気持ちのほうが先行しそうだよね。

専光
 ですが、事業者と消費者はなかなかコミュニケーションをとりにくいのが現状です。「使ってもらえたけれど感想すらもらえない」「サイトには来てくれたけど離脱してしまう」という課題を多くの事業者が抱えています。サービスの初期段階から消費者の「声」を拾うサイクルをつくることは、必要であるものの難しいことです。
 そして、消費者側も事業者に「声」を伝えることは容易ではありません。例えば行きつけのレストランには「ありがとう」を言えるけど、偶然出会ったストリートミュージシャンに「よかったです」ということはハードルが高い。
 ”あと値決め”は、価格を決められるだけでなく、きちんとした「声」のやり取りを一取引ごとに達成できる点が特徴的です。普通であれば取引が1000件あっても50件アンケート回答が返ってくれば御の字ですが、”あと値決め”では1件の取引につき必ず1つのコミュニケーションが生まれます。

秋山
 それは確かに大きい価値かもね。体験後に価格を決められることに加えて、消費者が「声」を届ける・事業者が「声」をもらう、ということにも大きな価値があるのかな。既存の方法だと、価格が決まっていて支払いをしてレビューを最後に聞くから、「声」を聞けない可能性が高い。でも、価格決定と支払いの間に「声」もセットでいただけるのは、確かに大きいかもね。

秋山 瞬

価値に寄り添った価格へ

秋山 
 習慣化したものの価格って特に柔軟性がないよね。自販機のドリンクだったら約120円、書籍もハードカバーだったら約1500円というように決まっている。それぞれ個別の中身は全然違うはずなのに、新商品が出てもカテゴリーごとに決まってる価格にほぼ準じている。
 ”あと値決め”は価格に柔軟性を持たせられるから、このような価値と価格の関係を見直すきっかけになりそう。

専光
 そうですね。体験系エンタメでは、数百円の値上げでも話題になる場合がありますけど、そもそもコンテンツの中身も予算も全然違うのに価格が一律なのはおかしいですよね。もっと価格の幅に柔軟さを持っていれば、価格を上げることにそこまで違和感は生まれないと思っています。最低価格は設定しつつ、価格に一定の柔軟性があってもいいですよね。
 消費者としては、体験したことのないものに例えば3,000円の価値が本当にあるかと考えることは困難です。「夕食代一回分くらいか、じゃあいいか」などと考えがちですけど、サービスの価値を評価できていないまま、雑な目算で買うか買わないかを決めるのはもったいないですよね。
 それに、売り手も相場が分からずに価格をつけてる場合もあります。新サービスだと事業者も適切な価格が分からないですし。

秋山
 ”あと値決め”によって、価値にそぐわない価格設定が起こりにくくなると思うんだよね。サービスが提供されたあとの消費者からのフィードバックが本当の価値だとしたときに、価格は価値に寄り添って適切なものになりやすいんじゃないかな。

3.つぎのアタリマエへ

さらに広がる信用の連鎖

17年間構築してきた安心して取引が行えるクレカ不要の後払い

本当に価値あるサービスが信用され、安心して取引が広がる社会を実現する

 

専光
 キャッシュレス化が浸透する昨今、多くの決済手段は「決済処理のスムーズ化」という機能を価値としていますよね。ですが、”あと値決め”はそのインフラとしての価値に加えて、「新しい製品・サービスに出会う」というユーザーの体験全体の価値を高めたいと考えています。アタリマエになりつつある決済としての機能を前提とした上で、ユーザーの体験全体をアップデートすることで次のアタリマエをつくるということです。
 信用創造という点でも、”あと値決め”は次のアタリマエを構築しようとしています。”NP後払い”では、「本当に商品やサービスを提供してくれるのか」という事業者に対する利用者の不信、「提供した商品やサービスに対して支払ってくれるのか」という利用者に対する事業者の不安を解消してきました。

柴田
 “NP後払い”を通じて、不正利用や不当販売ではなく、実際に存在する利用者や事業者が取引しているという事実を担保してきたことになるね。
 ”あと値決め”を広めていくことで、このような事実の上に「実存することが担保された利用者のレビュー」が蓄積することができる。なりすましがありえない仕組みであるという点において、このレビューの信憑性は既存の口コミやアンケート結果とは比較にならないほど高いよね。結果、このレビューは事業者自身や他の利用者からみても、「確実に」信じられる口コミになる。つまり、”あと値決め”は次なる信用を創造していくということだよね。

4.”あと値決め”が育った土壌

専光
 ”あと値決め”を実現させた機能的な要素を話すと、事前与信・事後請求という体験後のコミュニケーションのノウハウをNPが持っていることが挙げられます。

秋山
 たしかに。事前与信から事後請求までを自社で一貫して運営する技術がないと、”あと値決め”を実現することは難しい。
 とはいえ、NPの思想と合致していることも、”あと値決め”をNP社内で実現することに大きく寄与したと思う。あと値決めを通して解決しようとしている「歪み」は、価格決定権が事業者側だけにあることとか、ステルスマーケティング手法だったりとか、いわゆる本質的な価値に反するマーケティングの歪みだと思う。この歪みを解決しようとする”あと値決め”の姿勢は、NPの本質を追及する思考に合致しているよね。

専光
 「なぜ」”あと値決め”をやるかという点以上に、「どのような」”あと値決め”をつくるかという点は、ユーザーにとっての価値の本質を追及する思想を強く反映していると思いますね。
 ユーザーにより高く価格をつけてもらいたいという発想がサービス設計時から無かったことは、NP全体の風土に合致した志向ですよね。利益を出したいならば普通の定価に追加して料金を取る形だけにすると思います。ですが、「実現したい社会に対して、この料金設定の仕組みは本当に必要か?」と考えたときに、最低価格から恣意性なく価格決定ができるモデルが必要だと思いました。ユーザーにとっての価値を本質的に追及するという風土の会社でないと、この価格決定のモデルは実現が困難ですよね。 

秋山
 利益ありきじゃないチャレンジが、NPではやりやすいんだろうなと思う。NPは理想や本質を大事にするから、利益ファーストではないチャレンジでも社内で一定は許容されやすい。さらに、プラットフォームビジネスを作ってきているから、一定期間利益を出さずに取り組みつづけることに対して社内全体として寛容なんだよね。とりあえず一定期間儲からないのは当たり前だという感覚がNP内にはあるけれど、これは他の会社の新規事業を立ち上げる際にはありえない感覚だと思う。だからこそ、若手社員のチャレンジしたいという意思を応援する土壌が育つんだよね。

柴田 紳

柴田
 そう。この会社そもそもの存在意義は、会社の体力が許す限り社員がやりたいことを阻害しない環境であることだと思っている。
 それに、最初のアイディアの時点では良いも悪いもないから、具体的な要素が分からない段階からやるかやらないかを評価・判断することは誰にもできないよね。自分も新規事業やる度に周りからバカだと罵られてきた体験があるがゆえに、社員のチャレンジする姿勢は後押ししたい。

 

 以上、3名の仕掛け人たちが語る”あと値決め”の見据える現状と展望をお読みいただきました。普段はなかなか伝えることのできない、”あと値決め”に底流するフィロソフィーや”あと値決め”が育った土壌を、ほんの片鱗だけでもお伝えできたなら幸いです。

 抽象的で複雑な話題が飛び交うあまり、記事作成のために捨象した部分も数多くあります。また、この3名のみならず”あと値決め”に関わるあらゆるメンバーがそれぞれの理想を描いています。
 ”あと値決め”の見据える社会に共感してくださる方、興味関心を持って熱く議論してくださる方、ご連絡をお待ちしております。

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