ストーリー

「お坊さん便」が乗り越えた3つのHard Things、解決策となったのは徹底した努力・LINE・後払い。

2020.03.18

 4兆円以上に成長すると予想される仏事などのライフエンディング領域。「あと値決め」を導入頂いた利用者数No.1の僧侶手配サービス「お坊さん便」の事業部長・小野さんに、市場状況や過去のHard Things、直近での新規施策等についてお話を伺いました。

ーー11月に「おきもち後払い」を導入されて、反響はありましたでしょうか

「お坊さん便」事業部長・小野さん。よりそう本社オフィスにて撮影。

小野さん(以下、小野):
 導入開始の記者会見後に「おきもち後払い」を報じる記事が約40のメディアに掲載され、想定していた以上の反響があったと感じております。Yahoo!ニュースにも取り上げていただき、世の中の関心の高さが伺えました。サービスとしても「おきもち後払い」を利用されるケースが導入直後から増加して、ご利用者さまの中に後払いの需要があったことを確認できています。

 社内でも、後払いやあと値決めを別のサービスにも導入したいという声が出ていますね。 

 「キャッシュレス」などお金の扱い方が変わりだしている今の時代の流れの中で、あと値決めのシステムを「お布施に当てはめる」ことが面白い、先進的な取り組みとして見ていただいたのではないでしょうか。

ーーかなり大きな反響があったようですね。お坊さん側からの反応はいかがでしたか?

小野:
 まず一番に、導入のスピードに驚く声を多く頂きました。「おきもち後払い」を導入すると決めてから約1ヶ月後には始まりましたからね。大手ECサイトからの撤退からは10日ほど後です。このスピード感で新しい取り組みに挑戦していくこと、それ自体が民間企業が関わる意味だと捉えてくださった方もいらっしゃいました。

 サービスについても、お布施に関わる人々の不安に対する新しい解決策として、興味深く聞いていただいたように感じています。

社会課題と「お坊さん便」が提供する価値

ーー「お坊さん便」のそもそもの事業の価値、社会に対する課題感はどういったところにあったのでしょうか

小野:
 都市部への人口集中や核家族化をはじめとする地域社会の変化とともに、お寺と人々の関係性も昔とは大きく変わりました。菩提寺(先祖代々のお墓があるお寺)や地域の寺院との縁を持たない人が増えている。それでも、お葬式は仏式供養をしたいという方が多いんです。

 誰かが亡くなったらすぐにお葬式の準備をしますよね。でもその時に菩提寺を持っていない、つまり頼るお寺がない人が*3割以上いらっしゃいます。そもそもお葬式に関して何から準備をしていいのかわからない、お金がどれくらいかかるのかも聞きづらい、そのような中でも定額でお坊さんを手配し、ご利用者さまが不安のない供養ができるようにする、それが「お坊さん便」の価値だと考えています。(*よりそうにて行ったアンケート調査結果)

 お寺側も厳しい状況に立たされることが増えました。今やお寺の周りに人が住んでいないこともあります。人口の急激な変化に対して、お寺も一緒に動いていくというのは容易ではありません。都市部から離れたお寺は、新しく人々とのつながりを作ることがとても難しくなってきています。

 「お坊さん便」は、地域や縁の有無に限らずサービスを提供することで、お寺にとっても様々な人々との縁が生まれる機会になっているのではないでしょうか。またお寺の経営という点からも貢献できていると考えます。実際に「お坊さん便」のご依頼でスケジュールが埋まっている方も多くいらっしゃるんですよ。

参入障壁、「お坊さん便」が直面した3つのHard Things

ーー仏事に関する事業は必要性が高く、大手企業などの参入等も多いのではないでしょうか。

小野:
 実際にライフエンディング領域には大手やベンチャー含め何社も参入しており、各社過去には様々な挑戦があったようですが、長く続かなかった事例は多くあります。提携のパートナーを増やしていくことや、非常に繊細な領域でのリスク管理が必要になり、人とお金があればうまくいくような事業ではありません。たとえ大手で資本力を持っていたとしても非常に難しい事業だと感じています。

ーーサービス運営の上でHard Things はありましたか?

小野:
 大きく分けて3つほどありました。

 まずは、仏事という専門領域のインストールです。仏事に対する知識の量はお客様によって異なり、お客様によっては「自分の宗旨・宗派が分からない」という状態からお電話口で相談にのり、適切な仏事内容が決められるようなサポートが必要です。悲しみの中お電話をいただく場合も多く、非常にセンシティブな領域でもあります。仏事に関する専門知識を宗旨・宗派の垣根を超えたまとまった情報は世の中に落ちてはおらず、お客様のニーズによりそったコールセンターを作り上げることは大きなHard Thingsでした。 

もう一つは、お坊さんの手配業務の効率化です。現在1300人以上のお坊さんと提携を結んでいますが、お客様のお住まいや宗旨・宗派に合わせて、日程の都合がつく最適なお坊さんを手配するのはなかなか難しいんです。手配のためのやりとりも電話やFaxが多かったため、そこにかかるコストをどう効率化するかというのは大きな課題でしたね。

 3つ目は、「慣習の尊重」と「利便性」の両立です。例えば、大手ECサイトは利便性が高く、会社にとっては象徴的な販路でしたが、仏事そのものが「出品」されたかのような誤解に繋がってしまい取り扱いを終了しました。

 また、「お坊さん便」では定額制を導入することでお支払い費用に不安のある方のニーズに応えられた一方で、別途ご自身でお布施を包まれる方がいらっしゃることは把握していました。あくまでも「定額」をベースにしながらも、費用や支払い方法に柔軟性を持たせられる仕組みはそうはなかなか見つかりませんでした。

仏事という専門知識のインストール:コールセンターの立ち上げ

ーーコールセンターのHard Thingsを詳しく教えてください。

小野:
 「お坊さん便」のコールセンターは他サービス以上に専門的知識と、お客様1人1人に合わせた柔軟なサポートが必要になります。

 自分の宗旨・宗派が分からない方等も多く、「仏壇のこの位置には何が置いてありますか?」「掛け軸のここにはどういう言葉が書いてありますか?」「なるほど!それではお客様はOO宗ですね」などと言ったような細かな部分に対しても専門知識を持って対話をしていかないとそもそもご依頼内容を定めることも難しい場合もあります。

 お伺いした宗旨・宗派に沿った仏事内容、適切なお坊さんの判断や、お葬式の際に呼ぶ親戚について等、ご家庭の問題であっても相談を受けて一緒に考えさせていただくケースもあります。こういった受け答えには専門的な知識を踏まえた上で、難易度の高いコミュニケーションが必要になります。

 一般的なコールセンターの考え方としてはできるだけ電話時間を短くするアプローチが多いかと思いますが、お坊さん便の場合は、長い時間しっかりお客様に向き合うことが結果につながるということも見えてきました。

 ただの「注文を受け付けるセンター」ではお互いが幸せになれないんです。多少時間やコストがかかっても、しっかりお客様と個別に向き合って納得のいく、そして後にも悔いがない意思決定をしていただけるような体制にするまでは色々な苦労がありました。よりそうはこれらの課題に向き合い、徹底したお客様への姿勢を貫いたことが、現在の高い成約率と顧客満足度(**96%)につながっていると考えています。(**2018年よりそうにて行ったアンケート調査結果)

FAX等で行われていた手配業務の効率化:LINE連携

ーーお坊さんの手配業務の効率化はどのように行われたのですか

小野:
 結論として、LINEを活用した「お坊さんスマート手配システム」を導入しました。「お坊さん便」には様々な層の方が関わります。そのため「おきもち後払い」を約1ヵ月で実装したこととは対照的に1年ほど設計に時間がかかりましたね。

 初めからLINEの活用と決めていた訳ではなく、UX専門家を招いて業務効率化の方針や実際の方法を検討しました。提携僧侶の方々にも協力してもらい、複数の方法を実際に試していった結果、LINEを用いた手配が僧侶にとってもお坊さん便コールセンターにも負荷がかからず業務効率化できることが特定できました。

 どんな人でも簡単に使うことができるシステムになるよう、かなりこだわっていった結果として、実証実験では手配業務にかかる時間が1/120まで軽減され運用開始当初から半数以上の手配をLINE経由のものに移行できました。

「慣習の尊重」と「利便性」の両立: おきもち後払い

ーー大手ECサイト取り扱い終了に踏み切った経緯を教えてください

小野:
 大手ECサイトでの一件においては、仏事そのものが「出品」されたかのような誤解や、供養の意義や必要性に対する誤解を広めてしまう事態が発生してしまった結果、全日本仏教会からの声明や、サービスの意義をご理解いただいているお坊さん側からも、「提携しづらい」という声があがってしまいました。

 大手ECサイトでの取り扱いは会社にとっては象徴的な販路でしたが、「お坊さん便」そのものの知名度が高まったこと、また「菩提寺のない方のグリーフケア」というテーマをより伝える上でも、自社サービスサイトのみに絞った方が良いと判断したため、取り扱い終了に踏み切りました。

ーー大手ECサイト取り扱い終了の約10日後から始まった新しい決済方法「おきもち後払い」ですが、導入を考え始めたきっかけは何でしたか?

小野:
 弊社のサービスはもともとおきもち込みの「定額」として提示してありました。料金の不明瞭さへの不安の声があり、定額であることにお客様の安心感があったからです。その中でも別途お布施を包まれる方がいらっしゃることは把握していました。

 弊社としては、どうしても定額にしたいというわけではなかったのですが、お客様のおきもちを反映できるような支払いの仕組みはそうはなかなか見つかりません。あくまでお客様にとっての分かりやすい基準として定額料金のみでの提供をしていました。

 そんな際に、NHKでの「あと値決め」に関する放送を見て、「これを導入すれば、サービスに柔軟性を持たせられるかもしれない!」と思ったんです。(笑)

ーー「おきもち後払い」導入の一番の効果は何でしたか?

小野:
 仏教界の中でも民間の僧侶手配サービスに一定の理解を得る役割になりました。ただ単に方針として提示するだけでなくおきもちを受け付けられる仕組みに落として行動で示すことができました。

 それに加えて、もう一つ大きな狙いはサービス品質の向上です。利用していただいたお客様からお金という直接的な指標でのフィードバックが得られるのはとても重要です。評価していただいた「おきもち」分のお金はそのままお坊さんにお渡ししているので、お坊さんにとってもより品質の高いサービス提供を行う理由づけにもなります。

ーーなぜそのような課題の解決にNPの「あと値決め」を選ばれたのでしょうか。

小野:
 まず、「あと値決め」がオフライン(電話等)に対応していたことは大きいですね。

 「お坊さん便」をご利用頂く方の過半数が電話等のオフラインでお問い合わせを頂くため、スタッフがお客様情報をお伺いの上入力を行うことで決済ができる仕様は助かりました。幅広い年代のお客様がいる中で、スマホやPCの扱いが苦手な方にも使っていただけることはとても重要です。

 加えて、クレジットカードの情報や書類の提出が不要で、お客様の依頼体験に影響を与えずに導入できる点も挙げられます。

 仏事プランごとに金額を設定できることも選んだ理由の一つです。「お坊さん便」はお客様ごとにご依頼内容やオプションが異なり料金が1パターンではないため、仏事プランに応じて「一定の額」を設定できる「あと値決め」ならリスクなく運用できると感じました。

 こうして導入した「おきもち後払い」は、お布施のいままでの考え方と、社会の経済的な仕組みの折衷案を兼ね備えた仕組みになることができました。

ーー自社構築という選択肢はなかったのでしょうか?

小野:
 ありませんでしたね。「おきもち後払い」では、信用調査や請求業務が必要になることが分かっていました。それらのコストや未払いなどのリスクもあるため、自社でオペレーションを構築することには無理があると考えていました。NPへそういった業務をアウトソースでき、未収リスクも保証があるため、自社での構築ではなくNPに一括代行してもらおうということになりました。

「あと値決め」はどんな事業者に変化をもたらすか

ーー実際に事業者として使われてみて、「あと値決め」はどんなサービスに向いてると思いますか?

小野:
 案外ライトに始められるので、人と人とのサービスの場合はどの業種でも使ってみていいと思います。事業者としても、最低価格はこちらで決められるため損失リスクのない形で導入ができるし、費用も決済手数料のみなので通常の販売形態でも発生する費用の範囲内で実施ができる。

 オフライン受注・WEB受注の双方に対応でき、クレカや口座登録などもなく使えるため、どんなお客様にとっても簡単に使っていただける柔軟性もありますから、もっともっと拡大していくように感じています。

ーーありがとうございました。最後に、「お坊さん便」の今後の展望をお聞かせください。

小野: 
 「お坊さん便」は、すでにお問合せやご相談を頂いた際の成約率は高く、満足度も96%を達成しておりますが、サービスの認知度はまだまだ広げられると考えています。より多くの人に知っていただいて、サービスの規模をさらに拡大していきたいです。その上で一人ひとりの細かなニーズによりそって、お客様のよりよい選択のお手伝いをするために、これからもサービス改善の努力を続けていきます。

 ありがとうございました。


お坊さん便」公式サイトはこちら

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